2012世界のフレア

今、フレアの世界大会に出場したいと考えている人に
2012年現在の世界のフレアを私なりに解読していきます。

まずは、情報を仕入れようとチェックしたのはWFAのホームページ。
WFAホームページ
ここで大会のランキングを見ます。

大会って次の世代の選手はまだ荒削りで上位に残らないことが多く、
そこからこれからのフレアを見つけることが出来るのですが、
とりあえず現時点でのトップレベルの選手を確認。

WFA Grand Slam(WFAの公式大会)
2012/1/26 Olympic Casino Flair Mania 2012のリザルト上位10人を書き出します。
会場はラトビアのRadisson Blu Hotelです。
決勝の結果は以下の通りでした。

Tom Dyer,Denny Bakiev,Sylvain GLATIGNY,Maxim Polozyukov,Sergey Bulakhtin,
Riccardo Mastromatteo,Marco Sdrubolini,Vyacheslav Gazukin,Matteo Melara,Ivars Rutkovskis

この大会の動画がYouTubeであったのでこれを基に研究しました。

 

優勝したTomDyerの映像をチェック。
音楽に対してしっかりと合わせたり、体の動きの工夫をしたりというのはそこまでないが、
やっていることの難しさ(難易度)がトップなのに完成度もトップというすごさ。

まずはTomDyerの技の流れを見ます。
(ワーキング)
①1グラス
②3ティン1ボトル→4ティン1ボトル
③1グラス1ティン
④ジュース
⑤1ティン1ボトル→2ティン1ボトル→2ティン2ボトル
(エキシビジョン)
⑥4ティン1ボトル
⑦ジュース
⑧1ティン1ボトル→2ボトル1ティン→3ボトル1ティン
⑨2ティン2ボトル→3ティン2ボトル
⑩4ボトル1ティン
⑪シェーク、カクテル完成

ワーキングで4アイテム→5アイテム、2アイテム→3アイテム→4アイテムをして、
エキシビジョンでは5アイテム、2アイテム→3アイテム→4アイテム、4アイテム→5アイテム、5アイテムをしています。
10年前は4アイテムを一つでも入れると凄い!なんていわれていたことを思うと技術の進化のスピードは恐ろしいですね。

昔と比べて特徴的なのはティンの多用。昔のジャッジだったら作るカクテルが2杯の場合、3ティン1ボトルなんて評価されませんでした。
そう、「何でカクテル2杯作るのにティンが3つも必要なの?」という考え方です。
複数といえば2ティン1ボトル、2ボトル1ティン、3ボトル、4ボトルが基本でした。
ただ、それではバリエーションに限界があり、ChristianDelpechにより難易度がこれ以上上がらないところまで完成度が上がった2004年頃からカクテルを作るのに直接必要じゃないティンを使っても減点せずにどんどん難易度を追求してもらいましょうという流れになっています。

このティンを複数入れた4アイテム、5アイテムが今の世界の支流になっており、
難しい技を1回成功するごとに難易度1点をジャッジがつけます。
この難易度の最高点は50点なので例えば世界大会の予選演技時間5分のうち50回、決勝6分なら60回難しい部分を入れているかどうか。
それが今のフレアの難易度の基準となります。

特にポイントとなるのはシャーク、カップイン、バランスの3つ。
これを5分の流れで50回異なる技で入れ込むように組まないと点数になりません。
だから複数ティン投げ→シャーク、シャークが今点数を取りにいくセオリーなんです。

この場合単発のシャークではなく続けて投げることでより難易度を上げていくのが重要。
アイテム数が少ない時の単純な流れの単発シャークは点数になりません。

例えば5アイテムのフレアの場合(例えば右手が利き手の場合)
右手に3つ、左手に2つ持ち、3つ右手から投げ、シャークで2つを右手に残し、
左手に飛んでいくのを1つにします。
その後左手の2つをスプリットで投げ、右から飛んできた1つを左手でキャッチ、
左から投げた2つのうち低い方を右手でシャーク、高い方を左手に飛ばし、次につなげます。

そのままカップインやシャークをするのではなく、1つ残すことで次の流れに続けられます。
これら複数ティンのシャーク多用スタイルはシャークのタイミングが早く手首の負担が大きくなるので、
練習以外に手首を鍛えるトレーニングをしないととても持ちません。

よく「単純な3アイテムなんかより難しい2アイテムの方が難易度はつく」なんていわれてきましたが、
優勝したTomDyerがやっていて難易度のポイントがついたと思われるのは
①ジャグリングでのシャドウ、後ろからの入れ替え
②両手同時にアラウンドでティンをとり、ボトルをシャーク(1アクションで)
③ティンをシャドウ、ボトルはアラウンドを同時でボトルはわきの下(後ろ)でカップイン
④ティンをシャドウ(逆手)、ボトルはアラウンド同時でボトルはシャーク
これくらいと思われます(各1ポイント)。

つまり、2アイテムの難易度がつく最低条件は以下の通りです。
・ シャドウ系を入れた同時投げで後ろカップインかシャーク。
・ 後ろの同時投げからのシャーク
片手で投げるマルチプレックスからのシャークや前でのカップイン位でしたら難易度はつかないし、
どこかでバランスというのも相当難しい流れから思いもつかない場所でないとダメでしょう。
なので後ろ同時投げの練習とともに左右どちらでも自由にシャーク、後ろでのカップインを
できるようになっておくのが1ティン1ボトルの最低条件になっています。

優勝したTomDyerは難易度がつく技や流れをするのに、
ドロップ(観客の影で見えない分は除く)は4回だけと脅威の安定感。

難易度と完成度のバランスを見ると、本当はもっと凄い技を一杯持ってるのは明白。
なので、これから世界で勝負する選手は「その先」を見据えたトレーニングが必要です。

次に決勝2位、Denny Bakiev選手の映像をチェック。
特徴は技数の多さ!一つ一つの技の回転の速さもそうだけど、次の技を入れるタイミングも相当早い。
こういう映像で見ると何だか遅く見えるのが普通なので、
映像でこの速さだったら生で見ると多分何をやっているのかわからない。
この速さのポイントだが実は同じ手でキャッチする技がかなり多く、それが次の技の入りを早める特徴になっています。
ワーキングを見るとそれが顕著に現れて、前→シャドウ、わきの下→シャドウ、前→後ろ、前→首の後ろ
と投げた手と同じ手でキャッチする技を集中的に詰め込んでいるのがわかります。

手渡しやジャグリング系の技に比べて同じ手で処理する場合は
投げるタイミングを自由に変えられるのが大きな利点(他の技はキャッチするタイミングに合わせて投げる必要があるから)。
つまり、キャッチしてなくても次をどんどん投げていけるので、技を詰め込むことが出来ます。

DennyBakievは単純な前→前、後ろ→前の簡単な技は一切入れずに
わざと難しい流れをスピードを出してそんなに難しくなさそうにみせてるのがニクイ。
普通この流れを真似しても絶対にこのタイミングでは投げられないよというタイミングで投げ続けており、
ジャッジに対する印象がかなり高いのが想像できます。

またスイッチもいろんなパターンで入れ込んでいるので得点につなげやすくなっています。

さらにDennyBakievの特徴は体の回転が非常に多いです。。
今回は6分の演技の中で23回も回転している。初めの1分は回転してなかったことから実際は5分間で23回転。
13秒に1回は回っていることになる。優勝したTomDyerが10回程度なのに比べると回転の数が多いのは一目瞭然。

これがどのように影響しているかというとDennyの方が流れる、スムーズなフレアをしている印象を受けやすくなり、
回転をすることで動きをつけたフレアをしやすく、また見える角度が変わるのでフレアも複雑に見える。
この技にあわせた自然な回転は実は現代風のフレアの土台になっています。

TomDyerがすごいんだけどちょっと古いタイプのフレアをしているように見えているのであれば、
この体の回転の数が大きく影響しているのは明らかです。
もちろん、技の難易度がTomDyerほどないのでDennyBakievは優勝出来なかったが、これからのフレアをするのであればこの回転のテクニックをどう自分なりにアレンジするのかがポイントであることは間違いないでしょう。

3位のSylvain Glatignyのファイナル映像がなかったので4位のMaxim Polozyukovの映像を次にチェック。
ワーキングで1T1B→3T1B、2T1B→2T2B→3T2B。
2アイテムから3アイテムを飛ばして4アイテムへ、そしてワーキングで5アイテム、しかもボトルが2本。
一体どーなってるんでしょうか。

MaximPolozyukovの特徴は一つの技の中にもう一つ技を入れているところです。
例えば手渡しをするところをキャッチせずに転がして次につなげたり、
ジャグリングの1、2の2を転がしているのをキャッチせずに次を投げてしまったり、
TBを投げてTだけとってBをそのまま違うところへ投げたり。
これは今のフレアというより、次のフレアですね。
すべてこのテクニックで流れを組めたらもう次に何をするのかまったくわからなくなると思います。
次が読めないのはジャッジ側から言うと点数をつけるしかない。だって想像を超えているのだから。

ただ、このテクニックは不安定な状態を意識的に作らないと出来ないんですね。
キャッチしてしまうとその時点で技が終わってしまいますから。キャッチをせずに違う技に持っていく。
それをいとも簡単にやっているこのMaximPolozyukovはえげつないですよ。

私は大会に向けたトレーニングをしている時に映像を見て参考にするのは3位までなんです。
優勝した選手はもちろん、2,3位までは勝てるチャンスがあったはず。
でも4位となると勝てるところからちょっとはずれてるんじゃないかと。

だから4位以降の映像を見るときはいくら好きでも取り入れようとはしません。
だって勝てなかったから。なぜその選手はダメなのか、それしか見ないんですね。
勝つために見るんじゃなくて負けないために見る。反面教師として見るんです。

そういう目線でみると、、、
MaximPolozyukovはやっていることは難易度1位、創造性1位であることは間違いない。
でも結果が4位なのはなぜか。ドロップが多いんです。ただそれだけ。
今のジャッジなら、難しいことをして得られる点数より1回ドロップする減点の方が高い。
そういうジャッジングだから現時点では他の選手が崩れない限り勝てない。

たぶん本当はノードロップで出来るレベルまで難易度を下げるだけですぐ勝てるでしょう。
でも抑えるより見せたい衝動が勝っているのでドロップするんですね。
技術的には優勝できるのに勝てない場合、大体この性格的なものが影響していますね。

ただ、この選手は明らかに他選手より違うレベルのフレアをしていることは明白です。
ドロップが減って演技の完成度が上がったときにはしばらく誰も勝てないんじゃないかと思います。
日本の国内大会だけでいい、海外で勝負したいとは思っていない選手はそんなに参考にする必要はありませんが、
世界で勝負する場合、2年後(もしかしたら1年後?)はこの選手の難易度やスタイルが勝つための最低条件になってると思います。
まだまだ荒削りだけど次の世代の中心になるでしょうね。

5~10位の選手の中で後注目すべきなのは8位のSlavaGazukin。
創造性、フレアに対するアプローチが独特で観客の意識を集めるのも上手かったですね。

この大会では1~4位までの選手とそれ以降の選手との差が出てましたね。
ポーランド勢など今回出てない選手の技術を考えるとこの1~4位までの難易度や創造性を持ち、
完成度を上げていくのが2012年の世界のフレアのレベルなのでしょう。